試行錯誤を重ねてロボットを完成させる山脇学園のIoT授業
2024年度よりスーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校となった山脇学園中学校・高等学校(東京都港区)では、中高6年間を通してサイエンス教育が行われています。
今回はその中から中学2年次の技術の時間で行われているIoTの授業を取材させていただきました。
※IoTとはInternet of Thingsの略で、あらゆるモノをインターネット(あるいはネットワーク)に接続する技術のことを指します。
2021年に改訂となった中学校学習指導要領において「技術分野」の教育内容は「材料と加工に関する技術」「エネルギー変換に関する技術」「生物育成に関する技術」「情報に関する技術」となりました。それら4分野を網羅する内容として担当の小長谷先生が開発し、実施されているのが本プログラムです。モーターで動く車型のロボットを組み立て、それに「obniz(オブナイズ)」というマイクロコンピュータを接続し、ロボットに生徒プログラミングした動きをさせて検証していきます。ロボットは一人一台。生徒さんたちはそれぞれ試行錯誤を重ねてプログラムを完成させます。今年度は公益財団法人日産財団の理科教育助成を受け、木育ロボットを使った授業を実施しています。今回取材させていただいたのは1学期の最後の授業です。
これまでの授業の中で木製パーツを組み立て、モーター、車輪をつけて車体を完成させています。今回の授業ではobnizにプログラムを搭載し、サーキットを1周できるようになることがゴールとなっていました。
車体はMDFという木質ボードを使ってつくられています。情報科の小長谷洋介先生が設計し、レーザーカッターで切り出したものを組み立てて使います。車輪については生徒一人ひとりが必要な寸法を測ってデータ化したものを切り出します。最初は思うような大きさに切り出せず、車軸とうまく接続できるまで何度もやり直しを行ったそうです。ハートや星の形をつけたり、自分の名前を彫り込んだりと仕上がりにもこだわっています。



車体を動かすためのプログラムは、obnizのウェブサイト上で行います。まず、車輪の回転方向を制御し、左右の車輪の動きのバランスを調整します。その後、「前進」「後進」「右折」「左折」といった動作に対する設定を行います。左右の車輪をどのように動かすとどのような動作になるかを考えながら設定するのは、見ていて難しそうだと感じました。また、それぞれの車体には独自のクセがあるため、ロボットを実際に動かしながら非常に細かな調整を行う必要がありました。




授業は配られた資料を見ながら、まずは自分たちでやってみることから始めます。見本通りにプログラムを作成しても、必ずしもうまくいくとは限りません。そこにはシミュレーションでは得られない、実社会だからこそ得られる気づきがあり、生徒たちは常に「なんで?」「どうして?」と疑問にぶつかり、頭をフル回転させて課題解決に努めていました。わからない時には、生徒同士で教え合う姿も多く見られました。それでもどうしてもわからない部分については、小長谷先生にアドバイスを求めます。

プログラミングが終了した生徒さんたちはサーキットでロボットを走らせます。


無事に一周できたらゴール!プログラムのスクリーンショットを提出し、振り返りを行って今回の授業は終了となりました。
2学期にはさらに超音波センサーを搭載し、センサーから得たデータを使った動きを制御していきます。最終的には木材の伐採、運搬を想定した「働くロボット」を完成させるそうです。今日の授業もかなり難しい内容だと感じましたが、手を動かしながら試行錯誤をくり返す生徒さんたちはとても楽しそうでした。
山脇学園のサイエンスアイランドには継続して実験、観察ができる実験室、顕微鏡室、屋外実験場など、生徒さんたちが研究を深められる設備が整っています。詳しくは山脇学園中学校・高等学校のウェブサイトをご覧ください。
(清水)