昭和女子大学附属中学校・高等学校のデジタルファブリケーションの拠点「つくらぼ」から、学びが拡がる
みなさまは「デジタルファブリケーション」という言葉を聞いたことがありますか。
デジタルファブリケーション(通称デジファブ)とは、CADやモデリング用アプリケーションで作成したデジタルデータをもとに、3Dプリンターやレーザーカッターなどのデジタル制御された工作機械を使って、実際の“モノ”をつくり出す技術の総称です。
人の手では加工が難しい材料を扱えたり、精密な加工ができたり、同じものを量産できたりと、ものづくりの概念を大きく変える可能性を秘めています。家庭用PCと工作機械があれば、個人でも本格的なものづくりができる点も大きな魅力です。昭和女子大学附属中学校・高等学校には、昨年よりデジタルファブリケーションスペース「つくらぼ」が誕生しました。先生方の声かけにより集まった生徒たちが、スペースの立ち上げから関わり、現在も主体的に活用しています。
今回は、担当の水谷先生・小川先生、そして活動の中心となっている高校2年生の生徒さん(Yさん・Iさん・Rさん)にお話をうかがいました。

参加のきっかけは「何かつくってみたい」という想い
― つくらぼの立ち上げ時について教えてください。
水谷先生:
本校では、探究活動の最上位目標として「つくる」を掲げています。
ここでいう「つくる」とは、形のある作品に限らず、組織や仕組み、コンセプトといった無形のものも含め、最終的に誰かにとっての価値を生み出すことを目指す、多様な創造を指す理念です。
「つくらぼ」は、この理念を基盤とした探究活動の一環として立ち上げることとなりました。
―生徒のみなさまはつくらぼが立ち上がると聞いて、いかがでしたか。
Yさん:
1年ほど前、先生方からデジファブスペースをつくると聞いて、やってみたいと手を挙げました。兄が大学でものづくりに関わっていて、その姿を見て興味があったんです。
Rさん:
私ももともと何かを作ることが好きだったので、つくらぼ立ち上げの話を聞いて、ぜひ参加したいと思い、手を挙げました。
Iさん:
最初はデジタルファブリケーションについて何もわからなかったので、機械の準備は先生方にしていただきました。ただ、作業台や棚は生徒同士で話し合ってサイズを決め、組み立ても自分たちで行いました。
壁の色もみんなで決めて、実際に塗装したんです。黄色は“発想力を高める色”だと色彩を学んでいるメンバーに教えてもらいました。
シルクスクリーン印刷機を使って、つくらぼのオリジナルトレーナーも制作。立ち上げ当初集まったメンバーは10名ほどでしたが、現在は約50名にまで増えています。


つくらぼにそろう本格的なデジファブ機材
現在つくらぼには次のような機械があります。生徒さんたちの要望で導入された機械もあるそうです。
- 3Dプリンター:樹脂を熱で溶かし、デジタルデータを立体化
- レーザーカッター:カットや彫刻が可能で、多くの作品制作に活用
- UVプリンター:アクリルや樹脂素材にフルカラー印刷ができるプリンター
- シルクスクリーン製版機:データから版を作成し、インクで印刷
- その他、曲面印刷用プリンターや加工用の工具類
アクリル板、MDF(木質ボード)などの材料も豊富です。


Iさん:
実はアクリル板は、コロナ禍に職員室で使っていたパーティションの再利用もしています。アクセサリーメーカーさんから端材を譲っていただくこともあります。そのまま使うこともできますし、専用のインクを使って染めることもできるんですよ。
資源を大切にしながら創作を楽しんでいるのですね。
それぞれが、今いちばんつくりたいものをつくれる環境
― 普段はどのような活動をしているのですか?
Yさん:
毎月、先生方からつくらぼの開催日が提示され、その日に利用できます。私は絵を描くのが好きなので、自分のイラストをプリントしてアクリルスタンドをつくっています。好きな色や形にできるのがうれしいですね。

Iさん:
愛犬のグッズをつくりたくて、UVプリンターで写真を印刷しました。とてもきれいに仕上がり、満足しています。友人のものづくりの相談にのることもあります。もともとアイデア出しが得意ではなかったのですが、友人と話している中で、だったらこうできるんじゃない?みたいにアイディアを出すことが増えてきて、それを周りに『いいね』と言ってもらえることで、自信にもつながりました。

Rさん:
私は校内の有志団体「サイエンスコミュニケーションプロジェクト(SCP)」に参加していて、ワークショップ用のキットを製作しました。今年は恐竜がテーマで、恐竜のチャームを石膏に埋め込み、発掘体験ができるキットをつくりました。どの恐竜が出てくるかわからない仕掛けで、子どもたちにも好評でした。

ものづくりを通して広がるデジファブの輪
Iさん:
文化祭では、デジタルファブリケーションを多くの人に知ってもらうため、アクリルコースターづくりを行いました。顔画像が作れるWebサイトでオリジナルの顔を作り、レーザーカッターで彫刻します。パーツはすべて私がAdobe Illustratorで制作しました。
小学生が「かわいい!」と喜ぶ姿を見て、大きなやりがいを感じたそうです。私も、実際にウサギのコースター制作を体験させていただきました。また、校内の別のプロジェクトや部活動のために最優秀賞などの盾をつくることもあるそうです。生徒さんたちが身につけてきたデジタルファブリケーションの技術が、つくらぼの外に広がっているのですね。



「楽しいから苦にならない」データ制作と学び合い
― デジタルデータはどのように作っているのですか?
Rさん:
Blenderを中心に、Adobe Illustratorやアイビスペイントなどのソフトを用途に応じて使い分けています。書籍やインターネットで調べながら、分からないことは先生や仲間に相談しています。
小川先生:
いつの間にか生徒がBlenderをインストールして制作していて、驚くことがあります。質問されることで私自身も勉強になっています。
水谷先生:
生徒それぞれに得意分野があり、自然と教え合う関係ができているのがとてもうれしいです。つくらぼのメンバーが核となり、学校全体にものづくりの楽しさを拡げてほしいです。
校舎1階「Chill」から、さらに広がるものづくり
校舎1階のラーニングコモンズ「Chill」にもデジファブ機器が設置され、より多くの生徒がものづくりに触れられる環境が広がっています。

取材させていただき、生徒さんたちがものづくりが大好きで、楽しんでものづくりをしていることがよくわかりました。デジファブのためのソフトウェアの中には、高度な技術を必要とするものもあるのですが、好きなことだから学ぶことが苦にならないんだそうです。特に「なんでも作れる人になりたい」そして「ものづくりの楽しさをもっと多くの人に知ってもらいたい」という言葉が印象に残っています。その思いを実現できる“学びの拠点”としてのつくらぼ、これからどんな風に拡大していくのか、とても楽しみです(清水)。


